節税対策5つのポイント
その想いを実現するために、そして相続時の身内の揉め事をできるだけ避けるために、準備は早めにはじめることをおすすめします。
節税の方法はいくつかありますが、時間的な余裕があるほうが選択肢も増えますし、享受できる効果も大きくなるものです。
下記では、一般的に知られた節税対策をご紹介していますが、誰にでも有効な答えとは限りません。個別の条件により適した対策は異なりますので、具体的な対応についてはご相談ください。
生前贈与を活用する
財産の移転をすすめ相続税の対象財産を減らします
生前贈与は、被相続人が死亡する前に、本人から子供などに譲り渡す行為です。
財産を被相続人本人の名義で持ち続けていれば、本人が死んだ時には、当然ながらその全部が相続税の課税対象となります。(実際には控除枠があります)
いずれ相続をするという意思があるのであれば、生前に手放せるものは譲り渡しておくと相続税は下がります。
子供や孫への生前贈与をして財産を減らしていく方法は、対策として多くの方が行われていることですが、贈与税の非課税枠を活用するためには、押さえておかなければいけないポイントがあります。贈与税自体は高い税率となっていますので注意しましょう。
また、特定の人に資産の大半を贈与してしまうと、いざ相続が発生したときの遺産分割の際に、身内の争いのもととなってしまう場合があるので、そうした配慮も必要です。
また、相続が発生した時点から3年以内に贈与されたものは、相続税の対象となってしまいます。生前贈与を考える場合には早めに対応することをおすすめする理由のひとつです。
所有財産の評価額を下げる
土地や建物は、利用状況に応じて「財産評価基本通達」により評価減があります
自己資金又は借金をして賃貸物件を建てれば、相続の際に土地の評価額も、建物の価額も低くなるので基本的には相続税が安くなります。
- 土地の評価が更地に比べて低くなります。更地の約8割の評価になります。
- 建物の価額は、固定資産の評価額がそのまま相続税の評価額となり、建築費の約6割にまで下がるといわれています。
- 小規模宅地等の特例が受けられる可能性があります。
土地を多く保有している方の節税方法としては典型的なものです。
所得税や固定資産税の節税にもつながります。
ただし、下記のようなデメリットもありますので、相続時の節税だけにとらわれることなく、将来にわたっての収益性など、総合的・長期的に考える必要があります。
【デメリット】
- 賃貸物件建築後に空室が出てくると、見込んでいた収支に合わなくなくなる可能性もあります。管理維持のための手間や費用といった負担も考慮しましょう。
- 土地の上に建物が建ってしまうため、売買が難しくなったり、将来物納しようと思ったときに利用が難しくなったりするなどの可能性があります。
- 借入金によって建築した場合、返済についての対策が必要です。
返済可能な借金を作る
借入金の残額は、全額マイナスの財産として控除されるので、相続税を大きく減額
する効果があります
対策2のように、借入金で更地に建物を建てると相続税対策としての効果が大きくなります。
ただし、すでにふれたようにあくまで「相続時」の税金を安くするという効果です。
その後の借入金の返済計画に無理がないかは充分ご検討ください。
納税資金として生命保険と自己株式を活用する
対策1~3以上の節税対策を行っても、多額の納税資金が必要になる場合が
あります。
こうした場合の一般的なケースとして大口の生命保険に加入し、納税資金に充てるという方法があります。生命保険を活用します。
相続が発生した場合にすぐ現金で支払われるため、相続人の納税資金や、財産分割の資金に活用できます。保険の掛け金を支払うことで、相続財産を減らす効果もあります。
会社経営者などは、会社の株式を活用する方法もあります。
ただし、業績がよく利益が出ている会社や土地などの不動産を保有している会社などは、その株式の評価額が高くなる場合があり、その高い株価に相続税が課税されてしまいますので注意が必要です。また、未上場会社などは、市場での売買ができません。
こうしたケースも、商法の改正により、株式を相続した遺族が、その会社の株式を会社に売却した資金で納税を行うということが可能になりました。詳しくはご相談ください。
相続人を増やして税率区分を下げる
相続人を増やして、1人当たりの相続額を少なくする
⇒ より低い税率区分にあてはめる
これによって納税額が大きく減額します。
方法としては、「養子縁組制度」を活用し、法定相続人の数を増やすということになります。
ただし、相続税法上は法定相続人の数に含めることができる養子の数は次のとおり制限があります。
実子がいるとき | 養子と認められるのは1人 | 基礎控除額加算 600万円 |
---|---|---|
実子がいないとき | 養子と認められるのは2人まで | 基礎控除額加算 1,200万円 |
この場合、生命保険と退職金の非課税枠が増えることになります。(法定相続人一人500万円)
【注意】
相続人が増えるということは、相続の「権利を持つ」人の数が増えることであり、また、養子縁組という形が、他の相続人の感情を害する可能性もあります。これがもとで争いにならないよう、配慮した遺産分割対策をすることが大切です。
節税のみを目的とした無理のある対策であれば、問題が生じるのは、他の項目と同様です。